2018.10.09.公開 (2022.02.11.更新)
「消える中古スマホ 下取り1000万台、大半を輸出」という記事を見て
日経新聞の記事を見て、ちょっと違うなと思ったので執行達也個人の意見を述べたいと思います。
消える中古スマホ 下取り1000万台、大半を輸出
先日、日経新聞に「消える中古スマホ 下取り1000万台、大半を輸出」という見出しで記事が出ていました。
率直に申し上げます。私の個人的な見解としては全体の構造が見えていない記事と感じました。
まず、記事中に「世界の中古携帯流通台数について香港の調査会社」とありますが、情報の信憑性を計るためにもデータを用いるのであれば出どころをはっきりとさせて欲しいと感じます。次にiPhone7 Plusのキャリア下取り価格が市場の価格を上回っているという点。筆者の言っている市場とは日本市場の中古携帯市場のことだと思いますがそれは当然です。なぜなら日本の中古携帯市場は世界的に見て安い。理由は日本の総中流の市場では中古携帯の必要性が世界と比べて乏しいから。
そもそも論ですが、キャリアが下取りした商品を海外に出すのが何が悪いのでしょうか?
意図的に中古市場を潰す為に中古端末を日本に流通させないのであればそれはやめさせるべきです。しかし、私の知る限り海外の方が需要があり、相場が高く、多く売れるます。これは市場の原理であり、第三者がとやかく言っても変わりようありません。
それと、最後の方に「ある中古スマホ販売業者は「携帯大手が下取りしている端末が国内で出回らないとタマ不足は解消しない」と話す。」とありますが、個人的には国内の端末はダブついており、これ以上の供給は中古相場が下落する要因にもなり兼ねないと思っています。単純に安くなるだけで済むなら消費者にとってもメリットになりうりますが、キャリア下取り端末が一気に流通するとなると、端末価格が急激に下落し、中古携帯事業者の商売が成り立たなくなります。これは中長期的にて消費者のデメリットにも繋がるので、日本の中古携帯市場の需要増加に合わせてゆるやかに拡大して行くのが賢明だと考えております。
第三者(この記事では大手通信キャリア)を悪者に仕立て上げ批難するのは勝手ですが、一般消費者の方がこう言った記事に流されないことを祈るばかりです。
本当に重要な事とは?
記事の話しに戻りますが、私個人としても一点だけ懸念が残っています。
海外で高く売れるのはSIMロックが解除された端末だけで、SIMロックされたままでは当然高く売ることはできません。
通信キャリアが中古市場に対してロック解除の手段を提供せずに、自社でロック解除を行う事で製品価値を高めて海外に売っているのであれば、これは不正競争と言わざるを得ません。但し、これも非常にセンシティブな問題で、端末の所有権が誰にあるのかにもよると思っています。例えば、アップグレードプログラムなどによる端末提供がキャリアに所有権があり、ユーザーは使用権のみであればキャリアがSIMロック解除権を自身で行使しただけですので問題にはならない可能性があります。
今回の記事で私がなぜ異論を唱えるのかと言うと、あたかも通信キャリアが悪いことを行なっているかのような記事になっているからです。
日本の携帯市場において通信料が高いのは、元を辿ると国営だった日本電信電話公社(俗に言う、電電公社)まで遡ることになる。つまり政治の問題でもあります。
そして、携帯電話の普及をより効果的に早く行うために、端末メーカーに対して通信キャリアが開発費を補助し、また消費者には端末をタダでバラまくことでSIMロックが誕生したという背景があります。
当然SIMロックされた中古端末の流動性は乏しいので、悪いとするならば、「国、通信キャリア、メーカーそして国民(消費者)」であり、都合の良いときだけ通信キャリアのせいにするのはいかがなものかと思っています。
本当に通信料を下げたいと考えるならば、MVNOの促進、SIMロックの解除、中古携帯の認知促進、修理の多様化、消費者の意識改革の5つを同時に促進する必要があり、簡単に出来るものではないと考えています。
安倍首相や菅官房長官など、内閣の発言から火が付いた通信料問題。今後の5G普及の波もありますが、個人的には簡単に安くなるとは思えてなりません。